聞きなれたチャイムの音が鳴る。
それを合図に私は教室を飛び出した。





歩きなれた病院までの道を行く。
友人にはよく飽きないねって言われたけど飽きるわけが無い。
だってそこには大好きな彼がいるんだから。



病院につき彼のいる病室の扉をノックする。
返事は大抵してくれないので勝手に入ってゆく。


「佐久間くん、体調はどう?」
「ん、大分よくなったよ」


白いベッドの中に彼はいた。
私が来るまで本を読んでいたみたいだった。
彼はサイドテーブルに本を置く。


「しかしよく毎日来れるよなぁ・・・」


隣から源田くんの声が聞こえた。
二人は同じ病室なのであたりまえ。


「だって帝国のマネージャーですし、まあそれ以上に・・・」
「それ以上に?」
「心配なんだもん。佐久間くんのことが」
「・・・俺は?」
「あ、源田くんも!」
「とってつけたような返事をありがとう」


心配はしてるよ。一応。
それ以上に佐久間くんが心配なんだもの。


「それじゃ、俺はしばらく何処かに行ってるわ」


そういって源田くんは病室を出て行った。
大丈夫なのかな、歩き回って。
まあ・・・気を使ってくれるのはありがたいけれど。



「えー・・・と、とりあえず授業のノート」


鞄から何冊かのノートを出す。
佐久間くんが授業に出れない間の私の役目だ。


「いつもありがとう」
「えへへ、どういたしまして!」


素直に褒められることが嬉しい。
毎日頑張ってる甲斐がある。


「で、ファンの子からの見舞い品」
「それをが持ってくるあたりで間違ってるだろ」
「皆渡せればそれでいいんだってさ」


恋愛じゃなくて憧れの感情ならそんなものだろう。
見舞い品はクッキーやらチョコレートやらのお菓子類が多い。
佐久間くん、甘いものそれなりに好きだから喜ぶんだよね。


「少しお菓子とか食べていくか?・・・これだと栄養が偏ってて体壊しそうだし」
「あ、じゃあ少しだけいただくね」


とりあえずクッキーに手を伸ばす。
うん、美味しい。・・・手作りかな、これ。


「とりあえず紅茶入れるね」
「ん、任せる」


彼が紅茶を飲んでる姿はとても様になる。
流石というか何というか・・・。


「・・・なんだか佐久間くんって美人さんだよねー・・・」
「は?」


思ったことが口に出てしまった。
男の子が美人って言われて喜ぶはずがないよね。


「美人とか言うな」
「あぅっ、ごめんなさい」


べちっとよい音のデコピンをされた。
・・・結構痛いです。


「・・・俺から見たらお前の方が美人だよ」
「え、あ、あの」
「ちょっと恥ずかしいからこっち見んなばーか」


そっぽを向いて俯く。
佐久間くんの耳は真っ赤に染まっていた。


「えへへ、ありがとう」


美人なんて言われ慣れていないのでちょっと恥ずかしい。
でも好きな人に言われたものだから嬉しいんだ。
私は座っていた椅子から彼のベッドに移って彼に抱きつく。


「佐久間くん大好きー」
「っ!」


私から言うこともなかなか無いので恥ずかしいものがある。
そんなことをうだうだと考えてたら抱きしめ返された。
少し鼓動が早くなる。


「俺ものこと大好き」



大好きの応酬



「なあ成神、辺見、俺はいつ部屋に戻ればいいんだ?」
「あー・・・水緒が帰るまでじゃねえか?」
「ご愁傷様です、源田先輩」
病室から出て行った源田とその後合流した2人のそんな会話。

++
とりあえずお見舞いネタ。
時間軸としては真・帝国後です。