私の下駄箱にあったもの。
封筒にハートのシール。
これっていわゆる・・・・・・

「ラブレター・・・だよね?」



「え、エリザちゃん!エリザちゃん!」
「おはようちゃん。どうしたの?そんなに慌てて」

教室に行ったら既に席についていたエリザちゃん。
優雅にあいさつをしてくれた。

「あのね!ら・・・・・・」

よくよく考えてみるとここは教室。
あまりにも人目が多すぎる。

「ら?」
「あー・・・・・・ちょっと中庭に行こう!」
「え、あ、何事っ!?」

いきなり手を引いて走っていれば驚くよね、そりゃ。



「で、何がどうしたの?」

説明もなしに中庭につれてきたんだから仕方ない。
ちょっと申し訳ない気持ちになった。

「えっとね、朝きたら下駄箱にラブレターがありました」
「・・・・・・・・・え」

実物を見せてみる。
封筒に差出人は書かれていないのできっと中にあるのだろう。
中身を確認していなかったのでとりあえず見てみることにする。

ありきたりな文章。
そして少し雑に見える文字。
紛う事なきラブレター。
文末に書かれた差出人は―――

「「アントーニョ?」」

返事は放課後聞かせてくれとのことだった。

「まあとにかく行って来たらいいんじゃないかな」
「うー・・・・・・」



―――放課後

「いやーきてくれてよかったわー!」
「まさかアントーニョがラブレターだすなんて思わなかったわ」
「酷い言い様やなー」

もともと友人のような付き合いだったので少し驚いた。

「で、返事聞かせてもらえんか?」
「えー・・・っと悪いけどNOで」

授業を放り出して考え込んだ結果だ。
アントーニョは少し悲しそうな顔になる。

「やっぱり友達としてしか見れてないし、好きな人いるし」
「え、好きな人おったんか?・・・・・・誰?」
「・・・・・・ギル」

彼は少し驚いた顔になった。
そりゃあ予想もしない人でしょうしね。

「あいつかー・・・あいつ、好きな人おるで?」
「知ってるよ!知ってるからこそ何も言えないんじゃない」

あいつはエリザちゃんのことが好きだ。
いつだったか自分でそう言ってたから知っている。

「まぁ、あいつのことが嫌いになったらいつでも俺のとこに来てな!いつでも隣は空いてるしな!」
「・・・当分その予定はないけど考えとくよ」
「その時まで待つことにするわー」

そう言い残してアントーニョは去っていった。
叶わない恋だと知っても諦めきれないんだ。

「ごめんね、アントーニョ」

フられても明るく振舞ってくれた彼に少し感謝する。



翌日、少し学校に行くのが億劫だけど行かないわけにはいかない。
少し重い足取りで向かった。

ー!よっ!」

後ろから肩を叩かれたので少し驚いた。
ビクッてなったのは恥ずかしいけど何よりも嬉しかったのは・・・

「おはよう、ギル。一緒に行く?」

ギルベルトに会ったこと。
朝から会えて嬉しくない女の子いないわけがないじゃない!

「じゃあ一緒に行くぜー!」

朝から少しウザいくらいのテンションだがそんな彼が好きだ。

「そういやお前、昨日アントーニョ振ったんだってな」
「う、うん・・・」

少し声が上擦る。
ちょっとぐらい空気読んでよばか!

「つかなんで知ってるし」
「本人から聞いたんだよ」

アントーニョのあほ!
もー・・・何で言うのかなー・・・!

「お前ばかだよなー、告白する奴滅多にいないんだから付き合えばいいのによ」

この一言を聞いて体が熱くなった。
何でそんなこというのよ。
何で振ったかしらないからそんなこといえるのよ。
すごく悔しくていらいらする。

「ギルベルトのばぁぁあああか!!」

一言残して思いっきり走って逃げた。
あの場にいるのがすごく嫌だったんだもの、仕方ないでしょう?



午前中の授業が終わり昼休みとなる。
机に突っ伏した私にエリザちゃんが耳打ちする。

ちゃん、馬鹿が呼んでる」
「馬鹿・・・?」

指差すほうを見るとギルベルトがいた。
・・・・・・言われ様が可哀想すぎる。
とりあえずギルのほうに行く。

「で、何よ」
「お前ちょっとツラかせや」
「いつの不良よあんたは」
「今の時代の不良だよ」

そんなどうでもいい話をしながら屋上につれてこられる。
なんだかんだで二人きりってことだよね!
少し心音が早くなる感覚がした。

「で、こんなところに連れてきて何?」
「・・・朝さ、なんで全力で逃げたんだ?それも馬鹿って叫んで」

あぁ、少しは可能性ってものを考えないのかなこの馬鹿。
ローデさんやエリザちゃんがお馬鹿っていうのもすごく判る気がする。

「だってさぁ・・・・・・」
「・・・だって何なんだよ」

言うべきか言わざるべきか。
・・・もういいや、言ってしまおう。
振られたら潔く諦めるがいい、私。

「だって私はギルのことが大好きなのに!それなのにアントーニョとくっつけばいいって言うからよ!この馬鹿!」
「は・・・?」

息継ぎもなしに言ったら少し疲れた。
あぁ、振られるんだろうななんて考えたらなんか涙出てきたし。
泣き顔、あまり見られたくないなぁ・・・・・・。
そうだ、このまま屋上から出てしまえばいいんじゃないかな。
そう考えた私は実行に移そうとする。
踵を返して歩こうとしたらギルに手をつかまれた。

「また逃げるのか?」
「ギルはエリザちゃんのことが好きだから私、振られるんでしょ?そんな言葉聴きたくないの。」

ギルが手を離したので扉に向かおうとする。
だが今度は後ろから思いっきり抱きしめられた。

「え?」

・・・・・・え?抱きしめられた?
なんで?どうして?
こんな状態で状況を詳しく把握なんて出来るわけないじゃない。

「好きだ」

耳元でいつもより少し低い声でささやく。
少しゾクッとする。
もちろん良い意味でに決まってるじゃない。
でもさ・・・

「・・・ギル、言う人を間違ってるんじゃないの?」
「お前・・・この期に及んでまだ言うか」

だってギルはエリザちゃんのことが好きなはずだもの。

「エリザのことはとっくに諦めてるに決まってるだろ」
「・・・・・・ローデさんと付き合ってるからね、彼女」
とは友人だと思ってたけどな、告白されたって聞いてからこう・・・もやもやするんだ。で、フランシスに相談したんだ」
「フランシスって感情に関してはまともそうだしね、正しい選択だわ」
「まあ見事にそれは恋だって言われたぜ。・・・・・・あまり実感は沸かなかったけどな」

フランシスは恋愛に関しては一番まともに相談に乗ってくれる。
実は私もよく相談してたりする。
ちょっと変態っぽいところさえなければ立派な人だと思うよ!

「アントーニョと付き合うのかー・・・って考えたら少し嫌な気分になってやっと気づいた」

、お前が好きだ。お前は誰にも渡さねえ」

彼の綺麗な赤い瞳に見つめられて身動きが出来ない。

「返事を聞かせろよ、
「す、好きに決まってるじゃな・・・・・・ん」

言い終わらないうちに口をふさがれる。

「ずるいよ、ギル」
「ずるくて結構だ」

そういってニヤりと笑う彼だがその声は暖かかった。


授業も終わり、帰り道。
とりあえず二人で帰ることにする。

「そういやギルって意外と独占欲強いよね」
「知らなかったのか?俺様は独占欲がとても強いんだよ」

そしてまたキスの嵐が降ってきた。


独占欲
(お前は誰にも渡さないとか言われたら惚れるしかないじゃない)



「なあフランシス、俺の立場どこいったん」
「・・・・・・・・・すまん、ノーコメントでいいか」
そんなかんじで取り残された二人の会話。


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あれ?親分の立場どこいった^p^