窓側の後ろから2番目、それが私たちの席。
「今日は席替えをする!」
そんな先生の声に教室は一気にうるさくなった。
右から3列目の一番前という一番嫌なポジションにいた私にとって救いの声だ。
教卓の真ん前なんてほんと嫌になる。
(だって絵とか手紙が書けないじゃない)
今回はくじ引きで席を決めるらしい。
因みに前回はあみだくじ、正直線の量が多すぎてわかりづらかった。
女子から先に引くみたいなので教卓へ行って紙を一枚取ってくる。
番号は…28番。
黒板に席の番号が書いてあるので、自分の番号と照らし合わせる。
幸運なことに今回は後ろの方だ。
それに窓際の列。
とても理想的な場所が当たったと思う。
ひとつだけ、ひとつだけ願いがかなうなら、
どうか彼の隣りでありますように。
そんな年頃の乙女らしい願いをかけてみる。
良い席に当たっただけで十分運を使ってしまった私には到底かなうとは思えないが。
そう苦笑した。
クラスの皆が引き終わった。
方々から喜びの声や、絶望の声が聞こえてくる。
「とりあえず黒板に書いてある席に移動しろー」
そう先生の声が聞こえたので机ごと移動をする。
ガタガタとうるさくなり始めた教室。
とりあえず席の移動が終わった私は席に座って待つ。
そうしていると隣に机ごと誰か移動してきた。
多量の興味と少しの期待をもって私は隣を見る。
「隣はか、しばらくの間よろしく頼むぜ」
あぁどうしよう、これは神様に感謝するべきなのか?
自分の願いが叶って嬉しい反面、とても恥ずかしい。
ほんの少しの願いが叶い、隣の男子が自分の思い人。
……それなんていいシチュエーション?
「あ、あぁ、これからよろしくね!ギルベルト!」
窓側後ろから2番目
時は変わってお昼休み。
フランシスとアントーニョに連行されたギルベルトと私は屋上にいた。
私がいるのは屋上にいたら偶然彼らに会ってしまったから。
「ギルー、ちゃんの隣になれてよかったやんかー」
「お兄さんに感謝しろよ?」
「ちょっ?!馬鹿!」
笑顔、笑顔なのだが少し黒いオーラが見える2人。
ギルベルトはすごく焦ったようにフランシスの口をふさいだ。
だがアントーニョが話し始める。
「いやー、こいつなぁちゃんの隣になるためにフランシスに頼み込んだんや」
「もともとお兄さんが当ててたんだよ、あの席」
いつの間にか抜け出したフランシスも話に混ざる。
ギルベルトは…何かを諦めたらしい。
フランシスは私に近寄り耳打ちする。
「でもちゃんにとってもよかったでしょ?」
顔に血が集中する。
真っ赤になった顔を見られないように私はうつむいた。
「わかりやすい反応するねぇ…。多分気づいてないの本人とやたら鈍いやつくらいじゃないか?」
フランシスはアントーニョとギルベルトを見る。
あぁ、アントーニョは超鈍感だからなぁ。
「だってちゃん、ギルベルトのことチラチラ見てるんだもんなぁ」
「うっそ、そんなこと……してたか」
無意識に目が行ってしまうことがたびたびあったのだ。
勘の鋭い彼に気付かれていてもおかしくない。
「まあとにかくさ、応援してやるから頑張れよ」
「……よろしく頼みます」
とりあえず、これからの発展に期待。
++
「その時僕らは青春の中にいた!」
様に提出。
ありがとうございました!